〈塔ノ下〉の街に住む名探偵・除夜。
「あなたが本当に優れた探偵であるなら、誰かが命を落とす前に事件の謎を解くべきではないですか?」(p.16)と問われた彼は、探偵という自分の存在意義に対する矛盾を突かれ、「もう誰も死なせない」と決意するが──。
どこかから逃げてきたミサキ、古本屋の六月、時計屋の仰太郎、印刷屋の上岡少年もいい味だしてるなあ。
しばらく遠ざかっていた吉田篤弘さんがミステリーを書くとこんな風になるんだー、と興味深く読了。
なんだろうな、ミステリー枠なんだろうけど吉田さんが書くとその枠に入れるのは間違っているような、吉田篤弘枠とでも言いたくなるような…。
相変わらず独特の味のある、噛めば噛むほど味わい深い文章。