掌に眠る舞台 /小川 洋子

小川洋子

舞台の上では生と死、相反するものが共存することができる。

工具箱の上で踊る妖精、劇場の住人、花柄のスカートの下では履き慣らし少女が痛みに耐え、装飾用の劇場ではコンパニオンがハーモニカを吹き鳴らす。

資産家の愛人だった伯母さんは、いつか迎えに来てくれる青年紳士を永遠に待っている。

ザラザラとした、それでいて粘度の高い淋しさと悲しさに目眩がした。

小川洋子さんの作品には、誰にも顧みられない、世界の片隅で歪んで朽ちゆくものたちがとても丁寧に描かれていて、その目線に優しさとはまた違うある種の諦念を感じる。縺=もつ(れる)

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