存在のすべてを /塩田武士

塩田武士

2024年本屋大賞第3位。

物語はいきなり緊迫感のある誘拐事件から始まる。

ほぼ同時に起こされた2件の誘拐事件の繋がりは。

果たして狂言なのか。

事件は解決を見ないまま30年の月日が流れる。

担当刑事・中澤と交流のあった新聞記者の門田は、中澤が亡くなったのを切欠に、事件の真相を調べ始める。

ほんの少しずつ集まっていく不確かな情報が、事件の輪郭をじわじわと浮き彫りにしていく。

分厚さに一瞬怯むけど、本屋大賞3位はだてじゃない。

ぐいぐい引っ張る筆力がすごい。

芸術の世界でも袖の下がモノを言うんや…。

ていうかそれもう実力がどうとか関係ないやん…。

いやフィクションなんやけども、現状に近いとしたらげんなりするな。

とりわけ写実という分野のことを全く知らなかったので、ふーむ、と興味深く読んだ。

警察でも新聞でも、叩かれる仕事はあって、それでも粘り強く真剣に仕事をしている人は存在している。

「実在」っていうのは完成しないかもしれない、でも自分が完成させられなくとも誰かが受け継ぐ、というのは希望が持てる考え方だなあ。

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