耳に棲むもの /小川洋子

小川洋子

補聴器のセールスマンを軸に繰り広げられる、静かな物語たち。

『骨壺のカルテット』
長年、補聴器のセールスマンをしていた父が亡くなった。
父が生前信頼を寄せていたL耳鼻咽喉科の院長先生が手を合わせにやってきてくれたが。

『耳たぶに触れる』
収穫祭で行われた“早泣き競争”に参加した男に引き寄せられるように写真を撮った少年。

『今日は小鳥の日』
小鳥ブローチの会の初代会長は、大変立派なお方でした…。

『踊りましょうよ』
高齢者向け住宅にやってくるセールスマンさん。
ある日、そこでアルバイトをしている大学生が理想的な耳を持っていることを発見する。

『選鉱場とラッパ』
秋祭りの夜に見つけた、輪投げの景品のラッパがどうしても欲しくなった独りぼっちの少年。
全部読み終えて、ミステリ小説でもないのに(あ、これとあれが繋がってるのね)と確かめるために二度読みしたくなっちゃうところとか、全部語らない(これは多分こういうことなんだろうなー)的な想像の余白の残し方とかがすごく好き。

初期の小川さんを思い出させる少し怖い感じ、そこから磨き抜かれてここまで来た独特の世界観がギューッと圧縮されたような濃密な作品でした。

濃縮され過ぎてちょっと純文学みたいになってる感あるので初めて小川洋子を読む方にはおすすめしませんが、好きな人にはたまらんやつだと思います。

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