「ぼくは、そうは、思わない」と口に出して言える人間が果たして幸せかどうかは永久に分からない(口に出して言った安斎のその後の姿は暗くぼかされている)。
でも、自分や友だちが理不尽に傷つけられた時、そう言える心の強さの土台を作るのは大人の役目だ。
子どもだから見える景色もある、ということを忘れずにいることも。
「無知の知」を知識として知ってはいても体現できている大人はどれだけいるのか?
ややもすると説教臭くなりがちなテーマにあえて手を伸ばす、デビューして二十年、現状に満足することなく挑戦する作者の姿勢に敬意を表したい。